絵本『おじいちゃんがおばけになったわけ』
【著者】キム・フォップス・オーカソン(作)、エヴァ・エリクソン(絵)、菱木晃子(訳)
【出版社】あすなろ書房
ざっくり絵本紹介
★ 突然死んでしまったじいじが孫のエリックの前におばけになって現れる!何か忘れ物をしたらしい
★ 人の死をユーモアをとおして知る・考えるきっかけになる
★ 大事な人がいなくなる孫のエリックの立場で読んでもいいし、突然この世を去ったじいじの立場で読むこともできる
★ 孫が大好きなじいじと、じいじが大好きなエリックの気持ちがにじみでている、やわらかな絵がステキ
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道で倒れて突然死んでしまったじいじ。
孫のエリックは大好きなじいじが死んでしまったことを、なかなか受け入れられません。死がわからないのです。
そんなある夜、じいじがエリックの前におばけになって現れます。
どうやらこの世に忘れ物をしたようなのですが。
おばけになったじいじとエリックはその忘れ物を夜が来るたびに探すのですが。
おばけになったじいじとエリック、ふたりきりで過ごす夜はとっても楽しそうです。
ちなみに、外国のおばけだからかな?じいじ、足があります(笑)
男同士で過ごす夜、夜の街を歩いたり、おばけのじいじの壁の通り抜けに大騒ぎしたり、今まで知らなかったじいじの若い頃の話を聞いたり。
エリックにとっては、とっても貴重で楽しい夜を過ごすのです。
ついに、じいじの忘れ物が見つかったときは「そうだったのか!」と、そして二人のお別れのシーンは涙なしには読めませんでした。
ただ私の流した涙は悲しいだけのものではありません。
死を迎えたじいじにとっても、エリックにとっても死が前向きなものになったことの感動の涙も含まれます!
大人になっても、人の死は避けられないモノでだれにも経験するものなのに、なんとなく恐怖がありませんか?
よくわからないし、考えるのも嫌だし。
でも、死に対してもユーモアで描いたこの絵本『おじいちゃんがおばけになったわけ』は、死は、なにもかもがなくなるわけではない、だれかの心の中にはずっと残しておけるもの。それは、その人をずっと近くに感じることができるもの。と教えてくれている気がします。
私はじいじ側の気持ちでこの絵本を読みました。
読む人によって、孫のエリック側で読むのか、じいじ側で読むのかで絵本に対する思いも変わってくると思います。
じいじ側で読むと、
自分はどう死んでいくのか?
なにか思い残すことはないのだろうか?
大事なことは伝えているのだろうか?
エリック側で読むなら、
身近な人が突然死んだら、自分は心の整理がつくのだろうか?
その死に対して後悔はないだろうか?
ただ悲しむだけでなくなにかできるだろうか?
それぞれが、死に対して怖がるだけでなく前向きに考えてみたり、死についてだれかと話し合ったりするきっかけの本になるといいなと思いました。
いろえんぴつで描かれたような、まろやかな風合いの絵が、じいじとエリックの仲良しさを楽し気に、そして最後に訪れるお別れをやさしさいっぱいに表現しています。
ちょっと怖い死を題材にしている絵本なのに、なぜか心おだやかな気持ちになれる素敵な絵です。
おじいちゃんの死について孫が考えるというストーリ、実は日本の絵本でも有名なものがあります。
『このあとどうしちゃおう』ヨシタケシンスケさんの絵本です。
ストーリーは全然違うけれど、死を取り扱っていながら、ユーモアたっぷりなところは似ています(笑)
『おじいちゃんがおばけになったわけ』基本情報
デンマークの絵本
●日本語以外にも8か国語に翻訳されている世界でも人気のある絵本
●文字:ひらがな 漢字(難しいモノもあり・すべてふりがなつき)
●文字量:中くらい~多め
●絵:いろえんぴつで描かれたようなやさしい風合いの絵
●対象年齢:ひとりよみ 小学生低学年ごろから
☆死が怖い大人にもおすすめ
●ページ数:31ページ
●サイズ:縦26 x 横19.2 cm
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