「没後90年記念 岸田劉生展」東京ステーションギャラリー(東京駅)
☝<麗子肖像(麗子五歳之像>1918年10月8日 東京国立近代美術館にて撮影
岸田といえば教科書でみた「麗子像」、強烈な印象がありますよね。おかっぱ頭の少女はお世辞にもかわいいとは言いにくい肖像画。
あの衝撃の「麗子像」を描いた岸田劉生の展覧会が東京ステーションギャラリーで開催中です。麗子ちゃんに会うために行ってきたので展覧会の様子をレポートします。
「岸田劉生展」混雑状況
☝展覧会パンフレット
当日の混雑具合
日曜日午後2時半ごろに会場に入りました。展覧会では一番混雑している時間帯に行ってきました。
ただまだ始まったばかりの展覧会ですし、失礼ながら岸田劉生がそんな人気があるとは思えなかったので「会場内はガラガラかもな~」と予想していたのですが。
大盛況でした!
行列ができるほどではありませんが次から次へと人がやって来ます。どの作品も数人が立ち止まって見ているような状況で、一人で絵を独占して優雅に鑑賞とはいきませんでした。
日曜日だからでしょうか。ご夫婦や家族連れなどグループで来ている人が多かったです。
若い男の人がひとりで鑑賞している姿も多くみかけました。会場内はどちらかというと男性が多め。岸田劉生は男性に人気の画家のようです。
または麗子ちゃんのファンかもしれませんね。
この後の混雑予想
始まってすぐでこの混雑ぶりなので、9月の連休などは大変な混雑が予想されます。
できるなら平日の夕方4時半過ぎ(5時半まで入館可)や金曜日の夜間に行くのをおすすめします。
ちなみに今展覧会は巡回が決まっています。各会場で出品内容が多少異なるそうですが、山口県立美術館(2019/11/2~12/22)、名古屋市美術館(2020/1/8~3/1)に巡回します。
一番の混雑はどこ?
会場に入ってすぐの辺りでは人の流れが滞っていて「すごく混雑している」とびっくりしてしまいましたが、少し奥へ進むと人の群れが分散されていきました。
ただどの作品もまんべんなく人気があり、会場内どこも絶えず人が集まっている印象でした。
その中でも人気があったのはやはり麗子像。(特に油彩画)
みんな麗子ファンなんですね。
知っておきたい岸田劉生の基礎知識
☝《自画像》1914年4月9日 2018年に東京国立近代美術館にて撮影したもの(今展覧会では展示なし)
岸田劉生(1891-1929)は、日本の近代美術の歴史のなかで独創的な絵画の道を歩んだ孤高の存在といわれています。ひとつの到達点にきたら画風を変えて新たな作風へ展開させ続けた画家です。
見どころポイント
展覧会は制作年代順に進んでいきます。
第1章「第二の誕生」まで
1907-1913年 風景画多し
第二章「近代的傾向 離れ」から「クラッシクの感化」まで
1913-1915年 肖像画が多い
エッチングで描かれた<怒れるアダム><石を噛む人>1914年がおもしろかった。
デューラーの影響を受ける
第3章「実在の神秘」を超えて
1915-1918年 セザンヌぽいテーブルにりんご、壺といった静物画が登場
麗子ちゃん5歳も現れる!
第4章「東洋の美」への目覚め
1919-1921年 水彩画が増える。肖像画のモデルはほぼ麗子ちゃん 麗子ちゃん8歳に!
第5章「卑近の美」と「写実の欠除」をめぐって
1922-1926年 掛け軸が登場 野菜果物の絵が増える
第6章「新しい余の道」
1926-1929年 文字と絵の描かれた掛け軸が多くなる
作品をみて思うのは岸田劉生という人はとっても真面目な人なんだな~ということ。
作品に対してとっても丁寧に真剣に真面目に向き合って描いている。
その真剣さや真面目さが強く作品に表れていて、私としては面白みに欠けるのではないかとも思うのですが。
岸田劉生さんは潔癖症で病的な神経質な人だったそう。癇癪持ちで、社交的とはいい難い人物であったとも。(参照Wikipedia)
作品からはなんとなくその性格が伝わってくるような気がします。絵が上手すぎても才能がありすぎても、作品に味が出ないユニークさが十分に表現できない、描けないというジレンマがあったかも。(いや、自分の作品に自信満々だった気もしますが。どうなんでしょう)
お楽しみ
岸田劉生の自画像
☝《自画像》1921年4月27日
いろんな岸田劉生さんに出会えますよ。
残念ながら上の写真とは別ですが、私は赤茶色の洋服とおそろい柄の帽子を被ったゴッホぽい劉生さんが一番のお気に入りです。⇒《自画像》1912年3月14日東京都現代美術館蔵
麗子ちゃん
☝《麗子坐像》1919年8月23日
麗子ちゃんは劉生さんの娘さんです。
立っている麗子ちゃん、座っている麗子ちゃん、お着物姿の麗子ちゃん、洋装姿の麗子ちゃん、水彩画で描かれた麗子ちゃん、油彩で描かれた麗子ちゃん、木炭・チョークで描かれた麗子ちゃん。今展覧会ではありとあらゆるさまざまな麗子ちゃんがそろっています。
劉生さんは麗子ちゃんを描き続けているので、作品を通して少しずつ大きくなる麗子ちゃんの成長を楽しめますよ。
残念ながら教科書でみたあのニンマリ笑った強烈な麗子ちゃんには会えませんでした。
私のお気に入りの麗子ちゃんは、かわいいチェック柄のお洋服を着た麗子ちゃん。(No.107<麗子八歳洋装之図>1921年)
赤地に緑のチェック柄の生地に、濃い紫色(黒に見える)の衿、かわいいボタンが斜めについたおしゃれなお洋服です。
それにしてもどの作品も麗子ちゃんの手がごつい気がするのですが。気のせいでしょうか?そして顔も不思議。子ども特有の丸顔でもない“ぐちゃ”とつぶした感じがする顔。首も太いです。
麗子ちゃんは本当にこんな顔だったのか?絵がデフォルメなのか?父親劉生さんの目に見えていた麗子ちゃんの姿なのか?
謎です。
芸術家仲間の肖像画
劉生さんは交流のあった芸術家たち同時代を生きた人々の肖像画を多く描いていますので、当時の劉生さんの芸術仲間たちにも出会えます。
●バーナード・リーチ
⇒原田マハさんの小説『リーチ先生』で有名に。イギリス人で民藝を愛した陶芸家。
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●劉生の奥さま しげるさん
⇒マリアさまのように気品ある女性に描かれています。こんな風に描いてもらえると嬉しいだろうな。奥さまも画家。
●高須光治君
⇒むちゃくちゃイケメンです。劉生さんと仲良しの画家。
●武者小路実篤
⇒白樺派の小説家。まん丸眼鏡が劉生さんとおそろいで似ている。
●岡崎義郎氏
⇒画家。ネクタイやシャツ、指輪など、とてもおしゃれさん。
サインと日付
制作日時(日付も!)と岸田劉生サインがきちんと明記されている作品が目立ちます。
端っこのほうにこっそりではなく目立つ場所にドンと描かれていて、サインや日付も作品の一部となっているようでした。
タイトルや額ぶちが描かれていたおしゃれでユニークな作品もあります。
音声ガイド
音声ガイドの貸し出しはありませんが、自分のスマートフォンを使って「Multilingual Audio Support 」(英語 中国語 韓国語 日本語対応) で「岸田劉生展」の解説(機械音声・内容は抜粋)を聞くことができます。
自分のイヤホンで聞くことになるのでマイイヤホンを忘れずに。
(展示室内はFree Wi-Fi(SSID: TokyoStationGallery)利用可能)
所要時間
私の場合は1時間くらいでした。
会場内に人が多くいたので、順序通りというよりもとにかく空いている作品を選んだり、人気のある作品は空いている頃合いを待ったりして鑑賞しました。
見たい作品を見るために鑑賞には無駄に時間をかけました。
そしてスマートフォンで音声ガイドを聞きながらの鑑賞所要時間です。
ちなみに私は今回ミュージアムショップをほぼスルーしたので、ミュージアムショップをきちんと見るとさらに10分くらい必要だったはずです。
おすすめ本
岸田劉生の基本を知る本がおすすめです。
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「没後90年記念 岸田劉生展」基本情報
●会期:2019年8月31日(土)-10月20日(日)
●会場:東京ステーションギャラリー(JR東京駅 丸の内北口 改札前)
●休館日:月曜日[9月16日、9月23日、10月14日は開館]、9月17日(火)、9月24日(火)
●開館時間:10:00 - 18:00 ※金曜日は20:00まで開館 ※入館は閉館の30分前まで
●チケット:当日一般1100円
*山口県立美術館(2019/11/2~12/22)、名古屋市美術館(2020/1/8~3/1)に巡回します。各会場出品内容が多少異なります。
▼▼詳細は「没後90年記念 岸田劉生展」公式ホームページをみてください。
http://www.ejrcf.or.jp/gallery/
まとめ
いかがでしたか?
意外にも人気の高い「岸田劉生展」。
日本美術は西洋絵画よりも人気がないと思っていたら大間違えでした。
やはりあの麗子ちゃんには不思議なパワーがあるのかもしれません。
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