上野の森美術館(東京・上野)で開かれている、『フェルメール展』を見てきました。

混雑の中でもフェルメールの描く光の魅力が楽しめるよ
『フェルメール展』上野の森美術館(東京・上野)
この秋いや今年一番の話題になっているフェルメール展。
フェルメール(1632-1687 享年56歳)はオランダの画家。生涯を通して生まれたオランダ西部のデルフトから出たことがなく、生活圏内が異常に狭かったという画家です。
今回のフェルメール展は、驚くことにフェルメール作品が現存する37点(数点は真筆か否かの評価が別れている)うちの9点もが来日していて、大混雑・大人気展覧会となっています。
混雑具合と混雑対策は前回紹介しましたので、今回は実際に展覧会に行って見た作品について報告します。
▼▼前編で書いた混雑具合と混雑対策のブログ記事はこちらです。
みどころ①フェルメール作品
フェルメール作品を思う存分に楽しむために、今回の展示作品それぞれに、制作年・作品サイズ・所蔵先・来日・フェルメールメモ・作品メモを調べてみましたので、展覧会に行って作品を見るときの参考にしてもらえるとうれしいです。
作品は制作年の古い順にならべてあります。写真は、会場の外の美術館の壁にあったものを撮影したものです。
《マルタとマリアの家のキリスト》
●制作年:1654-1655年ごろ
●作品サイズ:158.5×141.5cm
●所蔵先:英・エンジバラ スコットランド国立美術館
●来日:2008年・2018年 2回目
●フェルメールメモ:22歳ごろ 裕福な家の娘カタリーナと結婚。聖ルカ組合(画家組合)に登録。プロの画家として活動開始。
●作品メモ:フェルメールの希少な宗教画。フェルメール作品の中でも一番大きな作品。
《取り持ち女》
●制作年:1656年
●作品サイズ:140×130cm
●所蔵先:独・ドレスデン ドレスデン国立絵画館
●来日:初来日
●フェルメールメモ:24歳
●メモ:東京展では2019年1月9日から2月3日まで展示。左端の男はフェルメールの自画像?とも言われている。
《牛乳を注ぐ女》
●制作年:1658-1860年ごろ
●作品サイズ:45.4×40.6cm
●所蔵先:蘭・アムステルダム アムステルダム国立美術館
●来日:2007年・2018年 2回目
●フェルメールメモ:26歳ごろ
●メモ:フェルメールの有名な人気作品。フェルメールのすぐれた技術が楽しめる。
《ワイングラス》
●制作年:1661-1662年ごろ(29歳ごろ)
●作品サイズ:67.7×79.6cm
●所蔵先:独・ベルリン ベルリン国立美術館
●来日:初来日
●フェルメールメモ:29歳ごろ 30歳のときには聖ルカ組合の理事に選ばれる。順風満帆の全盛期 。
●メモ:窓のステンドグラスなどの寓意性あるモチーフがあちこちに散りばめられた作品。
《リュートを調弦する女》
●制作年:1664年ごろ
●作品サイズ:51.4×45.7cm
●所蔵先:米・ニューヨーク メトロポリタン美術館
●来日:2000年・2008年・2018年 3回目
●フェルメールメモ:32歳ごろ 代表作を多数制作。
●メモ:全体的に暗めの作品。
《真珠の首飾りの女》
●制作年:1664年ごろ
●作品サイズ:56.1×47.4cm
●所蔵先:独・ベルリン ベルリン国立美術館
●来日:2012年・2018年 2回目
●フェルメールメモ:32歳ごろ この作品のような代表作を多数制作。
●メモ:黄色のカーテンと黄色のマントのかわいい女性が特徴の作品。ちなみに超有名な人気作品《真珠の耳飾りの少女》とタイトルが似ているのでお間違いなく(笑)。
《手紙を書く女》
●制作年:1665年ごろ
●作品サイズ:45×39.9cm
●所蔵先:米・ワシントン ワシントン・ナショナル・ギャラリー
●来日:1987年・1999年・2011年・2018年 4回目
●フェルメールメモ:33歳ごろ この作品のような代表作を多数制作。
●メモ:こちらに視線を向けている女性が特徴的。白い真珠と髪のリボンの輝く美しさに驚く。
《赤い帽子の娘》
●制作年:1669-1670年ごろ
●作品サイズ:22.8×18cm
●所蔵先:米・ワシントン ワシントン・ナショナル・ギャラリー
●来日:初来日
●フェルメールメモ:37歳ごろ 38歳のときに聖ルカ組合理事に再選。
●メモ:東京展では2018年10月5日から12月20日まで展示。真筆か否か評価が別れる作品。
《恋文》
●制作年:1669-1670年ごろ
●作品サイズ:44×38cm
●所蔵先:蘭・アムステルダム アムステルダム国立美術館
●来日:2000年・2005-2006年・2018年 3回目
●フェルメールメモ:37歳ごろ 38歳のときに聖ルカ組合理事に再選。
●メモ:大阪限定展示作品。1971年展覧会会場から盗難にあった作品。
《手紙を書く婦人と召使い》
●制作年:1670-1671年ごろ
●作品サイズ:71.1×60.5cm
●所蔵先:愛(アイルランド)・ダブリン アイルランド国立美術館
●来日:2008年・2011年・2018年 3回目
●フェルメールメモ:38歳ごろ 聖ルカ組合理事に再選。
●メモ:なんと2回(1974年・1986年)も盗難にあっている作品。
私が気になったのは、フェルメール作品の所蔵先です。(全作品の所蔵先は入り口でもらえる冊子にも書かれています。)
なぜなら、時の権力者と美術品の収集、なぜその作品がその国・その美術館にあるのかというテーマで見ると、さらに歴史的観点からもフェルメール展が楽しめそうだからです。自分なりにいろいろな方面からフェルメールを楽しむことをおすすめします。
【参考文献:『日経大人のOFF』2018年1月号】
みどころ②フェルメール作品を深堀する
入り口でもらえる作品に関する冊子や音声ガイドでも紹介されていますが、作品に登場するモチーフが表す意味を知っておくと、絵画の見方が変わります。ワンランクアップした感じです(笑)。ありふれた日常生活の一コマを描いた作品と思いきや、実は。といった想像を楽しめて、見ただけの印象からまったく違う作品に見えてくるかもしれません。
●楽譜やリュート
男女の愛を表す。
●馬の手綱をもつ女性
節制を象徴。道を外れることへの忠告。
●赤と青の服
聖母マリアは赤い衣に青いマントという姿が一般的。
●手紙(恋文)
恋愛の象徴。大航海時代に貿易で財を成したオランダでは、近代的な郵便システムが整備され、識字率の向上とあいまって手紙で気持ちを伝える恋文ラブレターが流行。
●ワイン
キリスト教ではワインがキリストの血の象徴で、これを飲むことは信仰の証。
●パン
キリスト教ではイエス・キリストの体とされる。
●鏡
自分自身を知る「賢明」の象徴でもあり、同時に外見をつくろう道具ということで「虚栄」「淫乱」の象徴でもある。
●毛皮・貴金属
モデルの社会的地位や富を演出する
●海をゆく船
恋人を象徴。(オランダだけ)
●窓
イコン(聖像)を象徴。カトリック教会は、聖像は神そのものでなく、神を見る窓であるという理論を確立した。(オランダはプロテスタントの国なのですがメモとして記しておきます。)
マイクロソフト社の創業者ビルゲイツはカトリック教徒であり、それゆえ彼はコンピューターソフトにウィンドウズ(窓)という名称を与え、スクリーン上の小さな記号をアイコン(聖像)と名付けたのである。
『モチーフで読む美術史』 山下規久男 著 / ちくま書房
【参考文献:『モチーフで読む美術史』 山下規久男 著 / ちくま書房】
みどころ③フェルメール以外の作品の楽しみ方
展覧会では、フェルメールと同じ17世紀にオランダを生きた画家たちの作品も見ることができ、当時のオランダの雰囲気が味わえます。
これらの作品を鑑賞しながら、17世紀のオランダはどんな国だったのかを知っておくと、フェルメール作品にもっともっと近づけます。
●17世紀のオランダ
海上貿易の中心として栄え、人々の生活は豊かだった。東インド会社の設立でアジア貿易にも乗り出す。中国の陶磁器やカリブ海の真珠、トルコやペルシャの絨毯など世界中の文物が集まり、市民は贅沢な輸入品を楽しんでいた。
海洋貿易で財を成した市民が家に飾る絵を求めたために、フェルメール作品のように小さなサイズのものが多くなっている。
●プロテスタント
オランダはプロテスタントの国。宗教画の需要がなく、神話画のヌードも敬遠され、好まれたのは風景・風俗画。フェルメールも早々に風俗画に転向した。
【参考文献:『日経大人のOFF』2015年1月号・『日経大人のOFF』2018年1月号】
おすすめ本
①「フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!」 小学館
フェルメール作品をカラーでじっくり見たい人におすすめの本。

フェルメール原寸美術館 100% VERMEER! (100% ART MUSEUM)
- 作者: 小学館
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2018/09/27
- メディア: 大型本
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②「こどもと絵で話そう ミッフィーさんとフェルメールさん」 菊池敦己他 著/ 美術出版社
フェルメールと同じオランダ出身のミッフィーと一緒に、フェルメールを子どもと楽しめる本。もちろんオールカラー。
基本情報
●会期:2018年10月5日(金) ~ 2019年2月3日(日)
●場所:上野の森美術館(東京・上野)
★2019年2月16日~5月12日 大阪市立美術館に巡回します。
●展覧会ホームページ:▼▼こちらから見ることができます。
まとめ
フェルメールの作品を通じて、当時17世紀のオランダの様子を満喫できる展覧会です。
フェルメール以外の作品も含めて、フェルメールが生きた17世紀オランダの時代の風を光を感じることができます。
なによりも、あのフェルメール作品を直にみられる感動もたっぷり味わえますので、このチャンスを逃さないように年末年始の予定をたててみてはどうでしょうか。
会場の外の美術館の壁が写真スポット。
自然の光がたっぷり当たった(笑)、フェルメール作品をバックにして写真をとれます。
東京・上野では、2018年秋~冬は見どころ満載の展覧会が続きますので、要チェックです。公式ホームページをみるだけでもワクワクします。
★西洋美術館「ルーベンス展」2018年10月16日~2019年1月20日
★東京都美術館「ムンク展」2018年10月27日~2019年1月20日
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