東京藝術大学大学美術館 で行われている『雪村 奇想の誕生』を見てきました。
『「ゆきむら」ではなく「せっそん」です。』の文字が目を引くポスターやパンフレットが気になっていました。
雪村周継(せっそんしゅうけい)は、戦国時代の画僧です。パンフレットによると、生涯は謎の多い人のようです。文化の中心だった京都には一度も訪れず、茨城・福島・神奈川など東国各地で活躍しました。関東人の私には、ちょっと親近感がわきます。
展覧会の内容
15年ぶりの大回顧展であること。雪村のユニークな作品が見ることができます。
おすすめ
作品は水墨画ですので、当たり前ですが白と黒の絵です。2色で、動きや空気感を表すのって、すごいな~と感動します。この展示会は風景画よりも人物画や動物画が多かったです。なので、わかりやすく楽しめます。
若い人におすすめしたい、あとはケツメイシが好きな人へおすすめします。
混雑度
年配の男性が多いです。人数はそんなに多くないのですが、みなさん熱心に見ているので一枚一枚をじっくりマイペースで見ることは難しいです。強い心を持てば自分のペースを保てるかもしれません(笑)
所要時間
じっくりみて45分程度です。
展示室の場所が離れている(3階と地下2階)ので、2回見るのはめんどくさくなってしまいました。気になる作品があったら、その階にいるときに見ておくことをおススメします。
せっかくだったので、もう1回音声ガイドプログラムのボーナストラック「花鳥風月」ケツメイシを聞きたかったな~。
家に持って帰りたい・気になった作品
琴高仙人・群仙図
3つの軸が並んでいて、真ん中に、鯉にまたがった仙人が描かれています。両脇は弟子たちです。
琴高仙人とは、龍の子どもを探してくるといって出かけた仙人が鯉にまたがって現れるという話だそうです。話も笑えましたが、この絵の仙人もどこかすっとぼけているような感じでした。逆に鯉のリアリティはこわいし。そのアンバランスが楽しいです。
ちなみに、後半には尾形光琳筆の「琴高仙人図」が展示されていました。こちらは、お上品な感じの仙人で、絵は美しく感じました。仙人と言うより、人間ぽかったです。
呂洞賓図
サーフボードのように龍に立ち乗った男は中国の仙人。力強い男です。手にはツボをもっています。このツボから龍をだすことができるといいます。
絵の中から風が吹いてくるような、躍動感ある作品です。
寒山拾得図
定番通り「箒をもった拾得」と「巻物をもった寒山」が生き生きと描かれています。かわいらしく、ユーモアでもあります。
「正面を見た寒山」と「後ろ向きから顔だけこちらを向いた拾得」の構図のバランスもおもしろいです。
私的には、この前見た展覧会で勉強したばかりの題材が出てきてうれしかったです。
こちらの展覧会でも「寒山拾得図」をみました。
猿猴図
牧谿(もっけい)の猿を模した絵だそうです。多くの画家が、この牧谿の猿を模して描いています。雪村の猿もかわいいです。
この題材の作品は室町時代~桃山時代によく茶室に飾られたそうです。
牧谿(もっけい)は、13世紀後半に生きた僧。水墨画家として名高く、日本の水墨画に大きな影響を与え、最も高く評価されてきた画家の一人です。
お楽しみ:音声ガイド
案内人の「若本規夫さん」の声が低くていいです~!!展覧会のイメージに合います。大河ドラマをみているような感じになりました。
そして、ケツメイシの「花鳥風月」もよかったです。なんで、この曲なのかはいまいちよくわかりませんが。
来ていたお客さんはほとんど年配の方でしたが、ポスターや音声ガイドから考えると、もしかしたら展覧会のターゲットは若者なのかもしれません。
感想
水墨画は苦手な分野です。見てもよくわからないし。白黒でつまらないな~ぐらいのレベルです。
なのに、今回はなぜか気になった展覧会でした。なぜかといえば、あちこちで見かけたパンフレット・ポスターが原因です。パンフレットに載っている、龍に乗った力強い男性、鯉にまたがった仙人のような男性。そして、なんだか不思議な感じの絵、躍動的な絵が興味を惹きつけます。
ポスター・パンフレットは本当に良くできています。展覧会にまったく興味のない我が家の旦那さますら、ポスターを町中でみて、「「ゆきむら」じゃないらしいよ」と言っていましたから(笑)。ポスター、パンフレットの影響は大きいです。
展覧会で、一番驚いたのは雪村が戦国時代に活躍した人物と知ったことでした。絵が現代的で漫画チックで、若者にも受け入れやすいものだったので、明治時代ぐらいの人かと思っていました!
雪村の作品は、一見大胆な豪快な絵だなと思うのですが、良く見ると細かな線のタッチで描かれた部分もあり、一枚の作品のなかに豪快さと繊細さが入り混じっています。多くは人間の顔の部分は細い線のタッチで描かれ、体や洋服の部分は太めの濃い墨で流れるようなタッチで描かれています。
その両極端な感覚が、不思議な(奇想な)感じを伝えるのだと思います。
いつも思うのは、日本の芸術家の作品も海外へ流出していることに驚きます。もちろん、日本の作品も海外の人にも見てもらいたいとも思います。が、流出してしまっていてなかなか日本で見られない作品もあるのかと思うと、もどかしいです。
展覧会の基本情報
2017年3月28日(火)~5月21日(日)
東京藝術大学大学美術館
東京上野にあります。ちょっと駅から遠いです。構内には、岡倉天心先生もいます。探してみてください。