大名茶人・細川三斎(細川忠興)
12月2日は「三斎忌」です。
大名茶人・利休の弟子だった細川三斎(忠興)は1645年12月2日に亡くなりました。
【細川忠興蔵(永青文庫蔵) 引用:Wikipediaより】
忌日には、茶道三斎流(九州・熊本と島根・出雲)合同で、熊本の立田自然公園内の茶室・仰松軒で三斎忌が行われます。
立田自然公園は、細川家の菩提寺である泰勝寺跡、園内には四つの御廟(細川藤孝夫妻、細川忠興(三斎)・ガラシャ夫妻の墓)があります。
また、三斎(忠興)の原図をもとに復元された茶室「仰松軒」では、京都で細川忠興が愛用した手水鉢(ちょうずばち)がみられますよ。
これは、豊臣秀吉(とよとみひでよし)や茶の師・千利休(せんのりきゅう)も使用したと伝えられているものです。
細川三斎(細川忠興)とは
1563年生まれ、肥後熊本54万石を治める大名家を隆盛した武人であり、当代の一流の文化人でした。
信長に気に入られていたことも有名です。
師匠の千利休とは41歳の年の差があり、利休が切腹したときには29歳でした。
一途な利休の信奉者で、利休なき後の千家を支え、利休の茶の湯を忠実に伝えたといわれています。
また『細川三斎茶書』などを書き残しています。
奥様は細川ガラシャ(玉)。
彼女は、明智光秀の娘でキリシタンであったことが有名な女性です。
細川三斎(忠興)と利休
利休が秀吉より堺に蟄居を命じられた時に、古田織部とともに堺行きを見送ったのが三斎です。
秀吉の怒りが、見送った二人にも及ぶかもしれないという危険をおかしてまでも見送ってくれた二人に、利休は自分でけずった茶杓を送ります。
三斎におくられたのは銘「ゆがみ」でした。
師匠・利休の茶の湯に倣い、守り通すことに徹した三斎らしく、三斎はこの茶杓をひっそりたんすにしまったといいます。
また、この時に古田織部におくられた茶杓は銘「泪」。
古田織部は「へえげもの」と言われるように、利休とは対極的な破天荒なイメージがありますが、織部は師匠・利休の形見として肌身はなさず持参したといいます。
二人ともかたちは違えど、師匠・利休を心から尊敬していたんですね。
細川家といえば「永青文庫」
第79代内閣総理大臣 細川護熙(ほそかわ もりひろ)さんは、三斎の子孫。
護熙さんは肥後細川家の第18代当主です。(三斎は2代目になります。)
現在の護熙さんは、政界引退後主に陶芸家・茶人として活動しています。
小泉純一郎元首相に推薦され2014年に都知事選に出馬したことが記憶に新しいですね。
名門の細川家は、なんと美術館「永青文庫」をもっています。
永青文庫は、700年の歴史を持つ細川家の文化財を後世に伝えるために、16代護立(もりたつ)氏によって、昭和25年(1950年)に設立されました。
代々、文武両道の細川家には武器から絵画、能面、茶道具などの多彩な美術品、さらに目利きとして知られる16代護立氏が収集した、禅画や近代絵画なども加わり8万点を超える美術品を所蔵しています。
国宝、重要文化財も含まれているすばらしいコレクションとなっています。
「永青文庫」コレクションの一部
①黒楽茶碗 銘「おとごぜ」 長次郎 安土桃山時代(16世紀)
利休の創意により長次郎に作らせた楽茶碗。銘の「おとごぜ」とは、茶碗のふくよかな形から名付けられたといわれます。
②唐物尻膨茶入 利休尻ふくら 中国南宋時代(13世紀)
細川家の重宝といわれ、利休の愛用品。千利休が北野大茶会で使用し、関ヶ原の合戦の褒美に徳川秀忠から三斎がもらったもので、多くの細川家の名物茶入れの中でも最も名高いものののひとつです。
③茶杓 銘「ゆがみ」 千利休作 安土桃山時代(16世紀)
④瓢花入 銘「顔回」 千利休作 安土桃山時代(16世紀)
利休が日常で使っていた身辺道具を茶道具としてつかった代表作です。(それまでの花入は青磁のやきものや、金属製の古銅が一般的だった。巡礼者が腰につけていた水筒の瓢を利休が所望して、花入として使ったという話が伝わっている。)
⑤南蛮芋頭水指 中国明時代(16世紀)
☝【東京国立博物館『永青文庫細川家の名宝展』パンフレット】
☝【永青文庫『洋人奏楽図屏風と大航海時代MOMOYAMA』パンフレット】
永青文庫には、庶民には考えられないようなお宝満載!
これらの茶道具は永青文庫で展示されたり、他の美術展の展示会で展示されることもあります。
直接見れば、強く利休や細川三斎が身近に感じられるかもしれませんね。
番外編 重要文化財の井戸茶碗 銘 細川
畠山記念館に所蔵されている、井戸茶碗 銘 「細川」があります。
かつて三斎が所持していたことからこの銘がついた茶碗です。
まとめ
茶人 細川三斎(細川忠興)は現存するお道具や茶室などから、現在でもその存在を大きく感じることのできる人です。
現代の私たちが当時のお道具を見ることができるのは、細川家が脈々と大事にお道具を守ってきてくれたから。
大感謝です。
参考文献
●東京国立博物館『永青文庫細川家の名宝展』パンフレット・出品目録
●『茶の湯入門』
●『和楽』2014年3月