有楽斎って誰?
本屋を母とブラブラしたときに、天野純希さんの『有楽斎の戦い』という本を見つけました。
私が「有楽斎の本だ!!読んでみたいね」と母に声を掛けたところ、母から「有楽斎って誰?」と言われました。母ってわりと歴史の本読む人なのに・・・・・・。
「え~~!有楽斎ってそんな認知度低いのかな?」
「有楽斎って人気ないの?・・・・・・。」
- 『有楽斎の戦い』天野純希
- 有楽斎って誰なの?
- 天野純希著『有楽斎の戦い』での有楽斎の生き方とは?
- 織田有楽斎 まんが「へうげもの」でも活躍
- 織田有楽斎 「特別展 茶の湯」にも登場
- まとめ:天野純希著『有楽斎の戦い』での織田有楽斎
- 内容:『有楽斎の戦い』天野純希著
『有楽斎の戦い』天野純希
偶然本屋さんで見かけた本です。
気になったのはタイトル。
茶人として有名な有楽斎さんがタイトルにもなっています!!
利休以外の茶人が本のタイトルになるなんて、すごい。
歴史上は、人気があいまいの有楽斎さんが主人公?なんておもしろいなと思い購入して読んでみました。
これを機に茶人である、有楽斎さんについてもっと知りたいと思います。
有楽斎って誰なの?
織田有楽斎
一言でいえば、あの織田信長の弟(武人)であり、千利休の弟子だった茶人。
私は茶道のお稽古をしていて知った人物ですので、武人というよりも茶人のイメージが強いです。
2016年の大河ドラマ「真田丸」にも登場しました。
天野純希著『有楽斎の戦い』での有楽斎の生き方とは?
本能寺の変
関ヶ原の戦い
大阪の陣
の3つの歴史事変をとおして、有楽斎さんの動きが描かれています。
「本能寺の変」の編
「知れば知るほど茶の湯は奥深く、生涯をかけてもその神髄にふれることができるかどうかはわからない。だが、それだけに甲斐があるというものだ。」
茶の湯に足を踏み入れた人がだれしも思うこと。
お稽古に通って、お点前を習って完璧にするのとはまったく違う次元の世界が「茶の湯」にはあるようです。
「自分の生は、戦いでも政でもなく、理想の茶を追い求めるためにあるのだ。」
「嗤われようと蔑まれようと、己の道を進むのだ。」
織田信長の弟として生まれてしまったばっかりに、武人兼茶人のような立場におかれてしまう。
武人の素質はゼロなのに・・・・・・。
でも、ある意味、織田信長の弟として生まれてきたからこそ、「茶の湯」と出会えたのではないかとも思うのですが。
「関ヶ原の戦」編
「織田家が滅んで録を失えば、茶の湯を続けることはできなくなる。茶を買うにも名物茶器を手に入れるにも、斯道はとかく銭がかかるのだ。」
これは、よくわかります(笑)
茶の湯に限らず趣味の世界ってなんでもお金がかかりますよね~。
茶の湯をやれば、いいお道具だって欲しくなりますし。当然ですよね。
現代でも、なんとなく茶道ってお金持ちの趣味というイメージがありますもの。
「茶の湯の道は、逃げ込む場所ではございませぬ。茶室とは、苦心と創意工夫の上に築きあげた城であり、客と主人が命を掛けて斬り結ぶ、いわば戦場なのです。」
利休が有楽斎へ語る言葉です。
武人として成果をだせないから、茶人になるのではない。
茶人として、茶室という城をつくり、茶の世界を生き抜くことは、戦国時代を生き抜くことと同じ。命を掛けて取り組むことなんだと利休は教えたかったのだと思います。
生死の狭間を超えたことで、茶の湯の真髄にほんの爪の先ほどではあるが、触れることができたようなきがするのだ。
この経験は自分の茶の湯にいくらかの変化をもたらすだろう。私はその変化が、今から楽しみでならない。
もう戦場での苦しみすら、自分の茶の湯に与えるエッセンスに考えている。
ちょっと普通の考えからすると引いちゃうけれど、有楽斎はだんだん芸術家ぽくなってきました。
私は生き延びる。生きて、利休でさえ届かなかった境地にたどり着いてみせる。世間が私をどれほど口汚く罵ろうと、構うものか。
いずれ大阪の城は焼け落ちる。江戸城とて、いつか誰かに攻め落とされるかもしれない。だが、私の茶の湯と茶室は世に残り続ける。
もう何がなんでも茶の湯のために生き延びてほしい!!
がんばれ、有楽斎。
「大阪の陣」の編
有楽斎は古稀を迎えた。
「残された時で、茶人として何が出来るのか。何を残せるのか」
多くの犠牲をはらいながらも乱世は終わり、名実共に、泰平の世が訪れた。ならば、あと五年でも十年でも生きながらえてやる。
そして今度こそ、後々の世に残るまで残る私の城を築く。それがこの泰平の世での、私の戦いだ。」
今、栄光を極めていても、未来においてはどうなんだ、何が残っているか?結局は何が勝つのか?という勝負を、有楽斎はすることにしたのだと思います。
有楽斎は勝負に勝てるのか?
織田有楽斎 まんが「へうげもの」でも活躍
古田織部を描いたまんが「へうげもの」では、有楽斎はよく登場します。
有楽斎はオシャレで女性にモテモテな、ちょいわるおやじ風に描かれています。
自分に自信マンマンに、上手に世の中を生きているように見えます。
高田純次さんのような感じです(笑)
でも「へうげもの」からも、彼が「茶の湯」を愛していることはわかります。そして、内面はナイーブなのかな?ということがなんとなく読みとれます。
なんといっても、「茶の湯」のためになんとしても生き延びるという意気込みはびしびし伝わってきます(笑)
織田有楽斎 「特別展 茶の湯」にも登場
2017年の話題の展覧会だった「特別展 茶の湯」(2017年4月~6月まで東京国立博物館でおこなわれた)でも有楽斎は登場しました。
「利休没後の様相」として
千利休と同じ時代を生き、利休の茶に大きな影響を受けつつ、新しい時代の到来を予感させる茶の湯を展開した古田織部、織田有楽、細川三斎の三人をとりあげ、利休没後の様相をたどる。
というコーナーがありました。
この中では、有楽が所持したと言われる大井戸茶碗「有楽井戸」が展示されていました。
もちろん「特別展 茶の湯」図録の主要人物解説にも、茶人として有楽斎はきちんと載っています。
有楽斎が建てた茶室「如庵」は現存していて、昭和11年に国宝の指定をうけけ文化史上貴重なものとなっています。
大阪城が滅び、江戸城は無くなっても!!、有楽斎の求めた「有楽斎の茶の湯」は、現代まできちんと繋がっています。
「やったね!有楽斎」と声を掛けてあげたくなります。
まとめ:天野純希著『有楽斎の戦い』での織田有楽斎
結局のところ、本の帯にある「逃げてでも、生き延びたいのだ。」が、有楽斎の生き方なんだと感じます。
茶人として今日まで名を残している有楽斎は、武人(仕方なく?)でありながらも茶の湯の世界で生きることに執念を燃やし続けた人物なんだな~と思います。
自分の与えられた人生の中で、何としても自分の信念を貫きとおそうとした、その執念が人間らしくっていいな。と思います。
高尚な生き方や考え方ではないかもしれないけれど、何かのために泥臭くとも生き抜く精神は人間としておもしろい生き方です。
そして、そんな人間に人はひきつけられるのかもしれないと感じます。
内容:『有楽斎の戦い』天野純希著
天野純希さんの小説『有楽斎の戦い』は、オール有楽斎の話というわけではありません。
有楽斎の他にも各章ごとに関連する人物のストーリーが描かれます。
それぞれのストーリーごとに読める、読みやすい短編小説のようになっています。
「本能寺の変」の章では、「初花」「新田」と並ぶ天下三大肩衝茶入れ「楢柴」を所持する島井宗室 のストーリー。
「関ヶ原の戦い」の章では、関ヶ原の勝負を決めた彼の西軍への裏切り宇喜多秀秋のストーリー。
「大阪の陣」 の章では、大御所徳川家康を祖父に持つ男。父は家康の次男結城秀康だが、家康に疎まれていて養子として他家をたらい回しにされたため、家康に親しみをもったことは一度もない、松平忠直のストーリー。
が書かれています。
飽きることなく読み進めることのできる歴史小説です。
秋の夜長の読書におすすめします。
まず一番に母に本を渡して読んでもらおうと思います(笑)